15-16シーズン中間考査・ヘルタ編

■素晴らしい前半戦と4つのポイント

シーズン前のプレビューで、ヘルタには厳しい航海が予想されるとコメントしたが、蓋を開けてみれば、リーグ戦は10勝2分け5敗と勝ち点32を稼ぎ、前半戦終了時で3位。またDFBポカールも鬼門と言える3回戦を突破した。本当に素晴らしい前半戦だった。

なぜ、ヘルタが好調だったのか、その要因を見ていきたい。

的確だった補強

ヘ ルタは、負債がようやく無くなったばかりで、経営的に余裕があるクラブではない。したがって、積極的な補強に動くことはできない。今シーズン開幕前、クラ ブは、ダルダイ監督が獲得を熱望したとされるハンガリー代表のジュジャークの獲得に動いた。しかし、条件面で他クラブに全く太刀打ちできず、獲得に失敗し た。

結果的に、バイエルンからヴァイザー、降格したフライブルクからダリダを完全移籍で、移籍市場が閉まる直前にはシュツットガルトからイビセビッチをレンタルで獲得したが、いずれもチームにフィットし、予想以上に活躍した。

特 に、イビセビッチには、正直驚かされた。個人的に、ここ数シーズンの出来から、彼の獲得に懐疑的だった。しかし、センターFWとして彼がいることで、ボー ルも収まった。また、昨年1トップで起用され、今一つの活躍にとどまったカルーの強みも引き出し、攻撃面、特に得点力という点での貢献は非常に大きい。

戦術面

ダルダイ監督は、攻撃的なサッカーを志向する監督だが、昨シーズン就任時は、チームが降格の危機にあった。そのため、現実的な対応として、フィットネスの強化と守備面の規律を重視し、コンパクトな守備からカウンターを狙うサッカーで残留を達成した。

今 シーズンは、シーズン前のプレビューで記述したが、まず、攻撃面は短いパスをつなぎ、相手を崩すことを一貫して選手に求めている。常に複数の選手が顔を出 し、リズムよくボールと人が動き、両サイドバックも積極的に攻撃参加することができている。もちろん、ダリダの加入も大きかったが、チーム全体の成長が窺 えた。データにもこのことは表れている。パス総数は昨年より1試合当たり130本増え、パス成功率も10%、支配率も8%上昇している。



また、攻撃でリズムが掴めない時、鍵となるのはセットプレーだ。セットプレーからの得点は前半戦でリーグ3位となる8得点を挙げている。

一方、守備面は、昨年をベースがベースとなっているが、ブロックを形成し組織的に守っている。昨シーズン来の課題だったセットプレーでの守備も、序盤でマンツーマンからゾーンディフェンスに代えるなど手を尽くした結果、危ない場面は減ってきている。

チームは攻守両面にレベルアップしていると言えるが、結果が伴ったこと、特に連敗がなかったことは、悪いときでも、チームの方向性が間違っていないことを示し、チームに自信をもたらしたと思う。

ダルダイ監督

ダ ルダイ監督は、厳格なタイプだが、ルフカイ前監督と異なるのは、選手のコントロールに長けている点だ。練習に楽しむ要素を取り入れることもあれば、チーム で食事などに出かけリラックスさせることもある。また、練習を急遽休みにし、頭を選手自身に整理させるような場合もある。控え選手に対しても、チームへの 貢献を求める一方で、プレーしたい事は理解していると、ある程度の気配りも見られる。

しか し、ルフカイ時代にゲームメーカーを任されていたロニーは、出場回数が激減したうえに、冬のキャンプに帯同することすら許されなかった。ダルダイ監督は、 ロニーについて、能力があるとは言うが、結局は、チームの戦術にフィットし、チームに貢献できる選手でなければ起用しない。つまり、常に選手にはパフォー マンスが求められる。

ちょっとしたツキ

こ れは余談になるが、ダルダイ監督は「サッカーの35%は運でできている」と言う。前半戦、ヘルタがバーやポストに救われた回数はリーグ最多の10を数え た。また、ホッフェンハイム戦は、降雪でピッチには雪が積もるというコンディションだったとはいえ、シュート数0で勝利するという奇妙な試合だった。

運も実力のうちとは言うが、実際、好調の陰にこんなちょっとしたツキも(少し)あったのだ。

し かし、成長したとはいえ、チームはまだまだ発展途上の段階にある。前半戦の7位のヴォルフスブルクまでの上位6チームとの対戦では、レバークーゼンに勝利 したのみで、1勝5敗に終わっている。特に、完敗だったバイエルン戦やグラードバッハ戦の2試合を見て感じたが、強豪相手では、より早く的確な判断が常に 求められ、細かいミスが命取りとなるということだ。チームが今後強くなっていくには、このあたりをより高めていく必要があるだろう。

後半戦への展望

前 半戦の順位は、まず忘れることが必要だ。08-09シーズンのホッフェンハイムのように前半戦快進撃を遂げる(首位で折り返している。)も、後半戦失速す るチームは過去いくつもある。監督も後半戦のスタートについて、インタビューなどで気にしており、とにかく1試合1試合戦っていくことが大事だ。

ヘ ルタは、12/13シーズンに前半戦快進撃を見せ6位で折り返すも後半戦スタミナ切れを起こし、失速したことがある(前半戦勝ち点28、後半戦勝ち点 13、最終順位11位)。ただ、今シーズンは、クフノコーチの過酷なフィジカルトレーニングにより選手のフィジカル面を徹底的に鍛えており、あの時のよう に後半戦に運動量が一気に落ちるということは、おそらくないと思う。

後半戦の布陣だが、前半戦から大きく変わることはおそらくない。


簡単に、各ポジションについて補足しておくと、まず、GKはクラフトがヴォルフスブルク戦で負傷して以来、ヤルシュタインが務め代役以上の活躍を見せた。監督は「クラフトがナンバー1」とコメントしているが、まだ100%ではない。

右サイドバックは守備的に行くならケガから復帰したペカリークだろう。トップ下は、今シーズンで契約が切れるバウムヨハンもチャンスを狙うが、現状では流れを変えたい時の切り札のようだ。

両 サイドは、ベーレンス、シュトッカー、ベン=ハティラが、レギュラーの二人を追うが、監督のレギュラー2人への信頼は高い。冬に加入したクルトは、当面は U-23で試合経験を積ませ、成長次第でトップチームで起用されることになりそうだ。トップに関しては、シーバー、アラギはジョーカーだろう。戦術によっ ては、原口が使われることになるだろう。

前半戦負傷で離脱していた、ペカリーク、シュタルク、シーバー、ベン=ハティラ、アラギといった選手達が戻り、少なくとも数の上で監督がコマに困ることはないだろう。あとは、選手がどのようなパフォーマンスをみせるかだ。

最後に、まず、ベルリンで決勝が行われるDFBポカールにまだ残っている。また、リーグ戦も欧州戦線の出場権をつかむチャンスは十分ある。シーズンが終わった時、ヘルタはどの港に到着しているのだろうか。ファンにとって、後半戦も久々に非常に楽しむことができそうだ。