14-15シーズンレビュー・ヘルタ編

【この記事は、管理人が『「フットボール狂の宴」用のブロマガ』にヘルタ担当として寄稿したものです。】

(「ファンがつづる独ブンデスリーガ2014-15シーズンレビュー」http://ch.nicovideo.jp/football-kyo-no-utage/blomaga/ar827507

シーズン前の展望では、各ポジションに充実した補強を行い昨シーズンのような失速はないだろうと考えていました。しかし、けが人が多く出たことを差し引いてもファンにとっては満足できないシーズンとなりました。

Kickerのデータから作成
Kickerのデータから作成

このデータを見るとヘルタは、昨シーズンに比べ、ボール支配率、パス数 が減り、パス成功率も大きく低下しています。「守備に追われ、出しどころは限られ、組み立てができず、散発的な攻撃」という悪循環に陥ったヘルタの今シー ズンを端的に示す数値と言えるのではないでしょうか。


では、ヘルタの今シーズンはどのようなシーズンだったのか、簡単に振り返るためシーズンを3つに分けてみていきたいと思います。

 

試合数

勝ち

分け

負け

勝点

得点

失点

勝点/試合

得点/試合

失点/試合

9

3

2

4

11

14

16

1.22

1.56

1.78

10

2

1

7

7

10

22

0.70

1.00

2.20

+

19

5

3

11

18

24

38

0.95

1.26

2.00

15

4

5

6

17

12

14

1.13

0.80

0.93

シーズン

34

9

8

17

35

36

52

1.03

1.06

1.53

    開幕から9節まで

    10節から19節まで(①と②はルフカイ監督)

    20節以降(ダルダイ監督)

 

    【開幕から9節まで】開幕からリズムをつかめないチーム

昨シーズンのフランクフルト戦がショートカウンターでことごとく得点を重ね6:1で快勝したのは対象的に、今シーズンの開幕戦は2点リードしながらあっさりと2失点し引き分けに終わり、確かに開幕戦はシーズンの1試合にすぎませんが、ここを勝てていればシーズンの入りは変わったのかもしれません。

2節のレバークーゼン戦は相手にあわせ3バックで臨み必死に耐えるも運動量に勝るレバークーゼンが後半に力を見せ24で完敗。以降9節までは32分け4敗という成績で推移します。

シーズン始まってすぐの時期、チームが安定せず試行錯誤しながら進んで いくことはよくあることで、実際、ルフカイ監督は特に安定感を欠く左サイドバックとラングカンプ選手が欠場していたセンターバックの起用には頭を悩ませて いたと思います。実際、右サイドにヌジェンク選手を起用し、本来右サイドバックのペカリク選手を左サイドバックへ入れる。センターバックでいえば、ハイ ティンハ選手のパフォーマンスが不安定なこともあり、ヘゲラー選手を起用するなど試行錯誤を続けました。(左サイドバックについてはシーズン前に不安視し ていたことが当たってしましましたが…。)

ただ、私は3節マインツ戦と4節のフライブルク戦を現地で観戦し、守備は昨年のような前線からプレスをかけカウンターという狙いも今一つ見えず、守備での厳しさもなく、攻撃は形が全く作れずパスミスのオンパレード、連動性も乏しく、今シーズンが厳しくなることを予感しました。

フライブルク対ヘルタで管理人撮影
フライブルク対ヘルタで管理人撮影

     10節から19節】ビーレフェルトからの迷走

9節のHSV戦に勝利し迎えたドイツカップ2回戦ビーレフェルト戦。アウェイとはいえ格下相手にしっかり勝ちたい試合だったが、ヘルタは相手に主導権を握られ、チャンスらしいチャンスも作れないままPK戦の末よもやの敗退を喫してしまいます。ここで自信を失ったのか、直後のパダボルン戦、ハノファー戦は内容的にも完敗し、チームは危機的な状況に陥ります。

バイエルン、グラードバッハという上位相手の試合では、超守備的に臨み、善戦はするものの力の差は明らかで勝ち点を獲得できず、10節から15節では2勝を収めていますが、ケルン戦はベーレンス選手の個人技とラッキーなFKから、ドルトムント戦は相手のミスからの得点で決して内容を伴っての勝利とは言えないものでした。

このころのヘルタは、守備でボールを奪っても、パスの出しどころがまず少なく、サポートも遅く、前線へとりあえず蹴る、それがつながれば、シュトッカー選手、カルー選手などの技量にゆだねるという攻撃。守備はといえば、チームとしてどこで奪うかの決まり事はやはり見られず、選手間の距離感も悪く、後手に回り、最後はファールでしか止められない…と攻守両面においてチームは悪循環に陥っていました。

16節フランクフルト戦。ヘルタはセットプレーなどから4得点をあげるも終盤守備陣が踏ん張り切れずドローに持ち込まれ、次のホッフェンハイム戦に至っては守備が崩壊し0:5という惨敗を喫し最悪の形で前半戦を終えることに。

個人的にはここで、打開策を見いだせないルフカイ監督を更迭し、ウィンターブレイクで立て直す選択肢もあったと思ったのですが、首脳陣は続投を選択。また、不振のロニー選手に代わるゲームメーカーの獲得など新戦力の補強についても「なじむ時間が少ない」ことを理由に移籍市場で動くことなくチームは後半戦へ突入します。

しかし、状況は改善されずブレーメン、レバークーゼンと3連敗しかもすべて完封負けを喫したタイミングでようやく首脳陣はルフカイ監督の解任を決断します。

 

    20節から最終節】ダルダイ監督就任、残留へ

チームを降格の危機から救うべく首脳陣はヘルタの元選手でU15監督を務めていたダルダイ氏にチームを託す選択をします。

ダルダイ監督は、就任後フィジカルの改善と守備の立て直しを図り、守備時はDF4枚とMF4枚がしっかりブロックを形成することを徹底。また、ラングカンプ選手が復帰したこともあり、ルフカイ政権時で壊滅的だった守備は安定感を増し、失点数が大幅に激減します。(1試合あたり2.0失点→0.93失点)また、懸案だった左サイドバックにはルフカイ監督にほとんど起用されていなかったものの、質の高いボールを蹴ることができるプラッテンハルト選手を起用します。

攻撃面は、守備のブロックが非常に低い位置であるため、前線の選手の個人力に依存する点ではルフカイ政権時から変わらず、得点数だけを見れば改善されたとは言えません。ただ、守備でリズムが作れてくると、攻撃でもリズムが生まれ複数の選手が絡む攻撃が見られるシーンはルフカイ政権の末期に比べ増えたと思います。

最終的に、残留を争うチームとの直接対決で勝利や引き分けたことがものを言い、最終節に1:2で敗戦を喫したもののなんとか残留を達成しました。

以上簡単にシーズンを振り返りましたが、今シーズンもやはりけが人が多かったこと(攻撃でアクセントをつけることができるバウムヨハン選手がシーズン入りすぐ長期離脱、中チゲルチ選手は復帰もすぐに再故障、前半戦はラングカンプ選手がケガでほぼ欠場、シーバー選手は後半戦離脱、ルステンベルガー選手は故障がち、ベーレンス選手も前半戦終盤でケガをした後はパフォーマンスが低下、細貝選手は後半戦ケガに入院…など)、シーズン中には監督解任劇、残留も最後の最後がもつれ、本当にファンとしても非常に苦しく厳しいシーズンでした。

最後に、来季へ向けての補強としては、中盤で攻撃の起点となり得点力もあるセンターハーフが一枚欲しいところです。(本来であれば今季移籍してきたヘゲラー選手がその役を担うはずでしたが…)また、FWについても後半戦はカルーしかいない体制(ヴァグナー選手に関しては、ほぼ構想外のようでもあり…)だったためもう一枚とっておきたいところです。経済的に余裕はないチームですので、その他のポジションについては、選手が抜ければ埋める形になるのではないでしょうか。