0.1ポイント差

※ Note(https://note.com/siebenendenweg/n/n6fffc90de5c5)に記載したものです。

 

 

新型コロナウイルス感染症は世界中に拡大し、影響を与えているが、フットボールの世界も例外ではない。
ドイツでは、ブンデスリーガ1部、2部、3部リーグが無観客試合ですでに再開をしているが、Regionalliga Nordost(4部、レギオナルリーガ北東地区、3月8日の試合を最後にリーグ戦は中断に入っていた)は、6月5日リーグを統括する北東ドイツサッカー協会がオンライン会議を開催し、リーグ戦の中止とリーグ戦の最終順位の確定方法等について決定を行った。

リーグ戦の最終順位については、中断時点での各チームの試合数に差があったことから、1試合平均勝ち点で順位を決定することなった。その結果、中断時点で得失点差で2位だったロコ・ライプツィヒ(22試合、勝ち点47)が、首位のVSGアルトグリーニッケ(23試合、勝ち点47)に比べ試合数が1試合少なかったことで、平均勝ち点(ライプツィヒ2.14、アルトグリーニッケ2.04)で上回り優勝となった。

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だが、この決定はフェアなものだったのだろうか。
優勝を逃したアルトグリーニッケでアシスタントコーチを務めるトルシュテン・マトゥシュカは"Bei Anwendung der Quotientenregel werden wir rechtliche Mittel prüfen. Das hat nichts mit Sport zu tun. Wir sind nicht bei der Mathe-Olympiade."(除法が適用される場合、法的措置を検討する。スポーツには関係のないことだ。数学オリンピックに参加しているのではない。)とコメントした。
他の優勝チームの決定方法として、アルトグリーニッケは、ロコ・ライプツィヒとの優勝決定戦を、コットブスは4チームにより優勝決定トーナメントをそれぞれリーグに対し提案したようだが、いずれも認められることはなかった。これらの提案はスポーツ的に見た場合どうだったのか。

まず、コットブスの提案した4チームによる優勝決定トーナメントは、仮にリーグ戦が継続していたとしても、この時点で3位のコットブスに自力優勝の可能性がなかった(すでに、後半戦でアルトグリーニッケとライプツィヒと対戦していた。)こと、もともとプレーオフは導入されていなかったことを踏まえると、正当な終わらせ方とは言えないだろう。

一方、アルトグリーニッケとロコ・ライプツィヒの優勝決定戦はどうだろうか。マトゥシュカの"Wir fordern ein Endspiel gegen Leipzig. Wir sind Herbstmeister und Tabellenführer und hätten am letzten Spieltag noch in Leipzig gespielt"のこのコメントの通り、前半戦が終わったとき、首位に立っていたのは、アルトグリーニッケだった。また、両チームは最終節にライプツィヒでの直接対決を残していた。つまり仮にリーグ戦が継続していた場合、どちらのクラブも自力で優勝を決める可能性を残していた。
となると、この両チームによる直接対決で優勝チームを決める手は少なくともあったとは思う。(ちなみに両クラブの直接対決はこれまでに5度あり、アルトグリーニッケの2勝2分け1敗。前半戦は2:2で引き分けている。)

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だが、最終的に、先にも述べた通り協会は、1試合平均の勝ち点換算で優勝チームを決めることを決定した。これももちろん正当な決定方法の一つではある。もちろん、マトゥシュカやアルトグリーニッケサイドの不満や悲しみは十分に理解できる。しかし、今回のケースについて、最も正しい決定方法が何だったかということについて、結論が出ることは絶対にない。

優勝を0.1ポイント差で逃したアルトグリーニッケは、ベルリンの南東部、トレプトウ=ケーペニック区アルトグリーニッケにあるクラブだが、過去ブンデスリーガはもちろん、旧東ドイツ時代もトップリーグの経験はなく、2012年と2016年の2度のベルリンリーグ(6部にあたる)優勝が保持しているタイトルである。

3部昇格のライセンスを満たすため、同じ区内で近所のブンデスリーガ1部のクラブである1.FC Unionは本拠地であるスタジアムの使用を申し出るなど、クラブは3部昇格へ向け、少しずつ歩みを進めていた。(同じ区内のクラブ同士ではあるが、アルトグリーニッケのハイネ監督はウニオンでの選手・指導歴がある。マトゥシュカはウニオンで299試合に出場し、ヘルタとのダービーで決勝となるFKを決めるなどウニオンの伝説ともいうべき選手でまた、アルトグリーニッケのクィリンク他2選手はかつてウニオンでプレーしていた。)
だが、残念ながら、クラブ史上最高の成果となったであろうリーグ優勝(3部昇格はレギオナルリーガ西地区とのプレーオフを勝ち抜く必要がある)の望みは、新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の事態により、はかなく絶たれた。

来シーズンも彼らが今シーズン同様、リーグ戦で優勝争いをする保証はどこにもない。実際、クラブマネージャーの ベーム氏の"Wer da alles unten mit drin hängt. Halle, Zwickau und Jena. Magdeburg und Chemnitz nicht zu vergessen. Die Absteiger werden sofort wieder hoch wollen. Und Cottbus ist ja auch noch da"のコメントのとおり、3部から降格したクラブは返り咲きを狙うだろうし、コットブスも昇格を狙っている。当然、選手の移籍などもあるだろう。

アルトグリーニッケは、リーグの決定に対し、法的措置は取らず決定を受け入れた。彼らの次の目標は、来期のDFBポカール出場権の獲得だ。アルトグリーニッケは、ベルリンカップで準決勝に進んでおり、準決勝でBFCディナモを破り、決勝で勝てばクラブ史上初のDFBポカール出場となる。ただし、そのベルリンカップも新型コロナウイルスの感染拡大により中断しており、8月に再開される予定のようだ。状況が悪化することなく、アルトグリーニッケに、思い残すことなくピッチの上で躍動し、自らの力でクラブ史に残る栄誉をつかむ機会が与えられることを願わずにはいられない。

(参考)
Der NOFV hat entschieden und ernennt Lok zum Meister
https://www.vsg-altglienicke.de/fussball/der-nofv-hat-entschieden/

Regionalliga : Altglienicke kritisiert Lok Leipzig: "Sportlich fair ist anders"
https://www.berliner-kurier.de/fussball/altglienicke-gibt-sich-geschlagen-li.86233

Regionalliga Nordost abgebrochen - Lok Leipzig Quotienten-Meister
https://www.mdr.de/sport/fussball_rl/regionalliga-nofv-entscheidung-lok-meister-keine-absteiger-104.html

Union hilft der VSG Altglienicke
https://www.fc-union-berlin.de/de/union-live/news/verein/Union-hilft-der-VSG-Altglienicke-2363k/